当店が初めて手掛けたプライベートブランド商品が、
大吟醸古酒「私心(わたしのこころ)」です。
「自分の理想の酒を作る」
・・・それは酒の販売を生業とする者なら、一度は持つであろう大きな夢です。
しかし、「やりたい」とひとつ言ったところで自分で醸すわけにもいきません。
この小さな酒屋の構想に耳を傾けて下さる酒蔵を探すため、
幾つか蔵元さんに話をして回りました。
酒の味を一から造り出す完全プライベートブランドの話なのですから、
なかなか頷いてくれる蔵元さんがないのは当たり前です。
しかしその中で、この想いを受け止めて下さった蔵元さんがひとつありました。
売れるか売れないか先のことはさっぱり見えないにも関わらず、
「良い酒を造りましょう」と言って下さった蔵元さんの確かな技術のもと、
初めての造りが行われました。
その年は、まだ姿なき酒に尽きっきり。まるで幼い子を育てるかのように無我夢中でした。
一年目、待ちに待った利き酒の日。
「美味しいが何かが足りない。この先に可能性があるのでは・・・。」
早く出荷したい気持ちをぐっと押さえ、もう一年寝かすことにしました。
するとその一年後、酒の表情がガラリと変わり、数段旨みが増しました。
いよいよ皆さまに呑んで頂ける!と気持ちもいっぱいに膨らみましたが、
「ここまで待ったんだ。もう一年辛抱して、この酒を見極めたい。」と、
この酒の更なる可能性に懸けることを決意したのです。
・・・三年目、ひとたび口に含んで感じたのは、なんともいえないまろやかさ。
一瞬で香りと旨みが口の中でふんわり優しく膨らみました。
三年がかりでようやく完成したこの大吟醸古酒は、まさに「私心(わたしのこころ)」。 三年の想いを考えると、この酒の名前は墨彩画家 本庄先生に由来するこの言葉以外には考えられませんでした。
こうして三年の時を経た酒は、
当店のプライベートブランドとして自信を持ってお勧めできる、
珠玉の一本となりました。
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