本庄先生との出会いはひょんなことだった。
とある、新潟市内のデパート。
時間つぶしにふと立ち寄った上階のギャラリーで
たまたま1枚の河童の絵に出くわした。
「1万円にまけときます、いかがですか。」とギャラリーの主に言われ、その小さな河童の絵を何の気なしに買った。
家に持ち帰ってその絵を眺めていたら「墨彩画家の本庄先生です」と、テレビがなんと自分の手元にある絵を描いた作家を紹介しているではないか。
その紹介映像の中に出てきた小さな仏様、「そういえばギャラリーで河童の横にあった」と思い返したらどうにも脳裏からその仏様の姿が離れなくなった。
・・・それからというもの、本庄先生の住む信州は戸隠村に毎年通い続けている。
唯一見えている右目も最近はかすみがちで
「いつ描けなくなるかわからない」という本庄先生。
そのような畏怖の念に襲われながらも製作への意欲は衰えず、
現在は、元来好んで描いていた油彩にも積極的に取り組んでいる。
世間を静かに、そして厳しく見据えるような油彩のコロボックルもまた強烈な存在感だ。
もちろんPBラベルで見るような墨彩画も、
まるで目の不自由さが嘘のように、その大きな手からすらすらと流れるように描き出される。
「塚本さんとわたしの仲じゃないですか。」そんなふうに気さくに話しかけてくれる本庄先生。
肩をたたき合ってしゃべっていると、まるで何十年来の古い友人としゃべっているような気持ちさえしてくる。
「夢はまだまだたくさんあるんだよ」
・・・互いの夢を披露し合って、また話に華が咲く。
そんな愉しい話の中で戸隠村のとある一日は過ぎていくのだ。
一枚の河童の絵との出会い。
・・・今こうして、あたらし屋酒店と新潟地酒は本庄先生の墨彩画に囲まれて毎日を暮らしている。
“出会い”とはなんとも不思議で、そして素晴らしい。
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